マイナンバー未回収で労務手続きが止まる理由とリスク

マイナンバー未回収で労務手続きが止まる理由とリスク

「マイナンバーを会社に提出したくないです。」と入職者から言われたらどうしますか。

「そうですか。では残念ながら不採用で。」と考える方もいると思いますが、内定通知後の入社書類提出の段階ではそう簡単にいきません。

過去400名以上の入職対応をしてきた私の経験上、「マイナンバーを出しません。」という方には出会ったことがないですが、「マイナンバー情報を漏洩されたら困る。管理体制が分からないから漏洩されるかも。」という不安からマイナンバーを提出しない方も世の中にはいるようです。

もしそのような方を採用した場合、どのような問題やリスクが発生するのか、マイナンバーの回収は強制できないのかについて今回は書いていきます。

マイナンバー無しで労務はできない

もはやマイナンバー無しで労務手続きはできません。労務に関するあらゆる場面で行政等から従業員マイナンバーの提出を求められるからです。

具体的に、入職退職手続きに関する社会保険・雇用保険の手続き、育児休業給付金に関する手続き、そのほか年末調整でも従業員のマイナンバー情報は求められます。

マイナンバー無しでも手続きは可能ですが、マイナンバーの代わりとなる資料の提出を求められるのが基本であり、その追加資料を従業員から回収する手間が発生します。当然、マイナンバーを提出しない方なので、その他の公的資料の回収もまず難航します。

労務手続きをスムーズに進めるためにも、入職時の段階で必ず従業員のマイナンバーを回収しましょう。

どうしても回収できないときの対応

会社には「法定書類(申告書・法定調書等の税務関係書類)へ番号を記載して提出する義務」があり、そのために従業員にマイナンバーの提出を求める権限・根拠があります。

しかし、従業員にマイナンバーの提出を義務付ける法律はありません。

一応、就業規則に「入社書類として原則マイナンバーを提出する必要がある」などと規定することはできます。

しかし、これらの根拠や規定を前にしても「だから何ですか?マイナンバーは大切なものなので提出しません。」という強情な従業員に効果は低いですし、本人が提出を拒み続けているなら回収は一度諦めるのも手です。もはや時間と労力の無駄です。

ではマイナンバーが回収できないとして、各種手続きはどうすればいいのか?


手間がかかりますが解決方法はシンプルです。

各種申請・手続きを行う際に「マイナンバーが従業員から回収できないため提出できない」旨を窓口相談し、代わりに必要な提出物・対応を確認することです。

マイナンバーの扱いは機関や手続内容によって異なるので、その都度確認することが結局大きなミスを避けることにつながります。かなり手間ですが、現実的には淡々と対応するのが吉です。

マイナンバーの管理は厳重に

マイナンバーの管理は厳しすぎるくらいでちょうどいいです。

マイナンバーが記入された用紙を回収したら、人事管理システムにマイナンバー情報を入力後、記入用紙は①施錠されたロッカー等に厳重に保管するか、②廃棄しましょう。

①マイナンバー書類を保管する場合

従業員のマイナンバー記入用紙は全て一箇所で保管するべきです。

よくあるケースとして、個人ごとに保管している入社書類の中にマイナンバー書類も入れていることがありますが、これは紛失・情報漏洩リスクが高いので辞めた方がいいです。

入社書類一式は人事情報を参照するために開くケースが多く、その度にマイナンバーは人目に触れることになります。

これでは「〇〇さんのマイナンバー記入用紙が見つからない!」というトラブルに発展した際、誰が入社書類を確認したか犯人探しのような状況に陥るケースも考えられます。

②マイナンバー書類を廃棄する場合

※マイナンバー書類の廃棄手段はシュレッダーか溶解処理が必須であり、自社で廃棄した場合は「書類名称・年月日・担当者・廃棄方法」などを記録として残す必要があります。

マイナンバー記入用紙を廃棄すると、当然マイナンバー情報はシステム上にしか残りません。

もし操作ミスでマイナンバー情報がシステムから消えた場合、組織が保管する唯一のマイナンバー情報が消えるわけですから、もう一度、その従業員の方にマイナンバーを提出してもらう必要があります。

ここが怖いのですが、場合によっては「システムからマイナンバー情報が消えた→それは紛失では?会社の管理体制が不安です。」とトラブルに発展する可能性があります。

システムの操作ミスで氏名・生年月日の情報が消えることと、マイナンバー情報が消えることは、同じデータ消失ですがそのミスが与える影響度は異なります。(氏名・生年月日の情報は最悪、履歴書から再入力できます。)

従業員からマイナンバーを回収する以上、それを厳重に管理するのは組織としての義務です。

「組織は当然マイナンバーを厳重に管理していて漏洩や紛失なんてあるわけがない」と従業員の多くは考えています。(信頼しているからこそマイナンバーを組織に提出するのです。)

情報漏洩はもちろんのこと、紛失や消失もしないように管理に細心の注意を払いましょう。

この記事を書いた人

板谷 隆誠のアバター 板谷 隆誠 代表 社会保険労務士

岡山県倉敷市で『あなうみ社労士事務所』を運営しています。趣味はマラソンです。