有期の雇用契約書で見落としがちな6個のポイント

今回は「有期雇用者の雇用契約書(労働条件通知書)」がテーマです。
- 「有期雇用者の雇用契約書も正社員用とひな形が同じ。」
- 「3年以上ひな形を変えていない。」
- 「有期雇用なのに、契約期間以外は無期雇用と同じ記載になっている。」
これらに心当たりがある場合、法律上必要な記載が抜けている可能性があります。記載漏れは労務トラブルの火種になりますので、一度確認してみてください。
※本記事では雇用契約書と労働条件通知書を兼ねた書面を想定しています。
有期雇用契約で記載が漏れやすい項目
正社員とは違い、有期雇用契約では以下の項目を必ず明示しなければなりません。
① 契約期間
「令和○年○月○日~令和○年○月○日」のように始期と終期を明記します。
「契約期間の定めあり」とだけ書いて具体的な日付がないケースが意外とあるので注意が必要です。
② 契約更新の有無
契約を更新する可能性について明記します。
「更新する場合がある」と記載するなら、あわせて更新の判断基準(勤務成績、業務量、会社の経営状況など)も記載が必要です。
③ 更新上限の有無
「通算○年まで」「更新○回まで」といった更新の上限を設けている場合は、その旨を明示する必要があります。
上限を設けていない場合でも「更新上限なし」と明記しておく方がトラブル防止になります。
※更新上限を途中から新設・短縮する場合は、当人にその理由をあらかじめ説明することが必要です。
④「相談窓口」の記載漏れ
パートタイム・有期雇用労働法により、パート・アルバイト・有期契約社員の雇用契約書には「相談窓口(雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口)」を記載する義務があります。
相談窓口とは、従業員が自身の待遇について相談できる担当者や部署のことです。
具体的には「相談窓口:総務部 担当者 ○○ 連絡先 ◾️◾️」のように、部署名と担当者、連絡先を記載します。
正社員用のひな形を流用している事業所では、この「相談窓口」の欄がそもそも存在しないため記載が漏れやすい項目です。
雇用契約書に相談窓口の記載があるか、ぜひチェックしてみてください。
なお、相談窓口は実際に機能していることが前提です。
「誰に相談すればいいか分からない」という状態にならないよう注意が必要です。
⑤「昇給・退職手当・賞与の有無」の記載漏れ
パートタイム・有期雇用労働法により、短時間労働者・有期雇用労働者に対しては「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」を文書等で明示する義務があります。
正社員の場合、昇給に関する事項は口頭での明示でも足りるとされており、退職手当や賞与は制度がある場合にのみ明示が必要です。
しかし、パート・アルバイト・有期契約社員の場合は、制度が「ない」場合でも「なし」と明記する必要がある点が異なります。
実際、正社員用の雇用契約書にもこの3点(「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」)が記載されていることが多いですので、有期雇用だからといって抜けていることは少ない印象です。
⑥通算5年を超える更新時に必要な記載
有期雇用契約が繰り返し更新され、現在の契約期間を含めて通算5年を超えることになる契約の初日から、従業員には無期雇用への転換を申し込む権利(無期転換申込権)が発生します。
この無期転換申込権が発生する更新のタイミングで、毎回、事業主は雇用契約書に以下の2点を法令上、記載する義務があります。
★ 無期転換申込機会がある旨
「本契約期間中に無期労働契約への転換を申し込むことができます」といった記載です。
これは従業員にとってのメリットとして書くものではなく、法令で定められた明示事項です。
記載していなければ法律違反になりますので、対象者がいる事業所は必ず確認してください。
★ 無期転換後の労働条件
無期転換した場合の労働条件(勤務時間、賃金、業務内容など)を明示する義務があります。
仮に「有期のときと同じ」であっても、その旨を記載しておく必要があります。
通算5年を超える更新が発生するかどうかは、契約更新のたびに確認する仕組みを事業所内でつくっておくことが重要です。
対象者を見落としたまま更新してしまうと、記載義務を果たせていないことになります。
「変更の範囲」の記載を忘れていませんか
板谷有期雇用に限らず「変更の範囲」が抜けているケースは非常に多いです。
2024年4月から、すべての労働者に対して「就業場所・業務の変更の範囲」を雇用契約書に明示することが義務づけられました。
以前は雇入れ時の就業場所と業務内容だけを記載すればよかったのですが、現在は将来的に変更される可能性のある範囲も記載が必要です。
例えば、
・就業場所:「雇入れ直後:○○店 変更の範囲:会社の定める事業所」
・業務内容:「雇入れ直後:接客業務 変更の範囲:会社の定める業務」
といった書き方です。
2024年以降に雇用契約書のひな形を変えていない事業所は、この「変更の範囲」が抜け落ちたままになっていないか、ぜひ確認してみてください。
契約書のひな形は定期的に見直そう
雇用契約書のひな形を何年も前に作ったまま使い続けている事業所は少なくありません。しかし、法改正により明示すべき項目は増えています。
今回の記事で取り上げた更新上限の明示、無期転換に関する項目、変更の範囲、相談窓口など、以前のひな形には存在しなかった記載事項がいくつもあります。
「今まで問題なかったから大丈夫」ではなく、法改正のタイミングでひな形を見直す習慣をつけることが大切です。



ひな形を見直す際は、厚生労働省が公開している「モデル労働条件通知書」をぜひ参考にしてください。
雇用契約書は「とりあえず渡しておけばいい」ものではなく、労使双方の認識を合わせるための大切な書類です。
特に有期雇用の従業員は記載すべき項目が正社員よりも多いので、一度ご自身の事業所のひな形を確認してみてください。





