入社書類の不備対応|回収フローと頻出ミス(経営者向け)

入社書類の不備対応|回収フローと頻出ミス(経営者向け)

入社書類は”第二の入社試験”です。

「面接では真面目でしっかりしてそうだったのに、入社書類は記載もればかり」「紹介で採用したけど入社書類の提出物を何度伝えても出さない」など、「この人に業務を振って大丈夫か?」と不安になることがありますよね。

私はこれまで300名以上の入社対応をしてきましたが、その経験から「入社書類に不備が多い方ほど、入社後に何らかのトラブルに関与しがち」という認識を持っています。そして入職者の約3割は入社書類に不備があります。

入社書類は「書き方がわからない」「提出が遅れます」といった不備やトラブルが多く発生しますが、不備によって健康保険の利用開始日が遅れたり、通勤手当が確定しないまま業務がスタートしたり、ちょっとした行き違いが大きな問題へと発展することも少なくありません。

入社書類は必ず入社前にすべて回収しましょう。

目次

よくある入社書類の不備パターン

入社書類の不備は、主に未提出、記載不備、捺印不備の3パターンです。特に添付書類が未提出になりやすいです。(例:「印鑑登録証明書」や「通勤車の任意保険証券の写し」など)

「気軽に平日昼間に市役所に行けない」などの理由により、一部の書類が期限内に提出が間に合わないことがよくありますので、対策として、内定通知の際に「行政等から手に入れてほしい書類」を前もって入職者に伝えておきましょう。

この他、「提出が必要な書類だと思わなかった」という理由で未提出になりやすい書類もあります。例として、所得税に関する「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は未提出になりがちですが、この理由で書類が未提出になる方には注意が必要です。

「出してください。」と依頼している書類を自己判断で提出していないわけですから、届出関係の業務を任せる際には、ダブルチェックを徹底したり、または最初は届出業務を任せないのが得策です。


また、捺印もれや「身元保証書と印鑑登録証明書の印影が異なる」などの捺印不備も20人に1人くらいはいます。

対策として、捺印が必要な箇所にフセンを貼ったり、少し手間ですが「記入例」を同封したり、「提出漏れがないか最終確認する用のチェックリスト」を同封しておくといいでしょう。

フセンを貼るのは手間が少ないのでおすすめです。

入社書類の不備回収の3つのコツ

①入社書類はすぐ内容を確認する

入社書類を回収したけど内容を確認するのが面倒くさい。そもそもどこを見ればいいのか分からない。という感覚をもつ方は多いはず。

入社書類は日常的に触れるものでもないので当たり前です。しかし、入社書類の確認が遅れるほど、もし内容に不備があった際に入社までに対応できる日数が減ってしまいます。

回収から2日以内には確認して、もし不備があるならすぐに入職者に対応指示を出すべきです。

②提出書類を減らす

「そもそも入社書類として回収するべき書類なのか?」という視点は大事です。

提出書類が多いと入職者の負担になります。

組織によって入社書類で回収する書類は多様です。身元保証書ひとつでも、併せて印鑑証明書を回収する組織もありますし、逆に身元保証書自体を提出不要とする組織もあります。

正社員とパートで回収する入社書類を変えることも特別なことではありません。

入社書類の束が送られてきて喜ぶ入職者は聞いたことがありません。「本当に回収が必要な書類か?より少なくできないか?電子化はできないか?」など柔軟に考えて対応するべきです。

③未提出なら「提出予定日」を確認する

入社書類の一部が提出期限日までに間に合わない方には、必ず提出予定日を確認しましょう。

「〇〇の書類が提出間に合いません。後日提出します。」このような言葉はこれまで嫌というほど聞いてきました。

大半の方は本当に後日提出してくれますが、入社から2ヶ月も経過しているのに提出がなく、追加連絡もない、”やばい方”は一定数います。

「提出が間に合わないことは承知しました。では提出物の代わりに提出予定日を教えてください。」とすることで、「期限までに提出しないと。」という意識を入職者の方に持ってもらうことができますし、また「提出予定日までに未提出なら再催促する」などこちらもスケジュールを組みやすくなります。

提出予定日を確認しておかないと、常に「いつ提出されるんだ?そろそろ催促するべきか?」と悶々とした日々が続きますので、提出予定日の確認はとても大切です。

提出してください。とやみくもに言い続けるだけでは提出物は回収できません。

入社書類確認は「違和感」に気づくことが大事

入社書類の内容を見て「違和感」に気づくこともとても重要です。

入社書類を確認していると「何かおかしくないか?」と違和感に気づくことがあります。この違和感が不備予備軍です。

【違和感の例】

  • 「通勤経路、遠回りして通勤手当多くもらおうとしてない?」

  • 「保険証券の写しが未提出?本当に任意保険に入ってる?」

  • 「母親は会社員だけど被扶養者にするの?間違いかも。」

もし不備を見逃してしまうと、以下のような問題に発展する恐れがあります。

【リスク】

  • 「通勤経路、遠回りして通勤手当多くもらおうとしてない?」
    →1年後に気づいて過払い分を請求、「そっちの確認もれじゃん」などトラブルの種に。

  • 「保険証券の写しが未提出?本当に任意保険に入ってる?」
    →未加入の場合、通勤中の事故で第三者から組織に損害賠償請求の可能性も。

  • 「母親は会社員だけど被扶養者にするの?間違いかも。」
    →間違いの場合、手続き業務の時間が浪費されることに。

入社書類の確認時は、全体を俯瞰的に見て整合性がとれているかにも目を光らせましょう。

入社書類はすべて回収が原則

「入社してしまえばこっちのもの。提出物の催促がしつこいなら退職も考えます。」という方は実際いますし、入社後に提出催促を続けると「入職者とのコミュニケーションに問題が起きるかもしれない。」という不安にもつながります。

入社書類が完備されていない場合、主に以下のような問題が起こります。

  • 行政への労務手続きができない(マイナンバー提出)
  • 通勤手当の支給額が分からない(通勤許可申請書)
  • 労働問題発生時に対応資料がない(誓約書、身元保証書)
  • 助成金、給付金の申請書類が足りない(雇用契約書)

これらの書類が未回収の場合、社会保険の加入手続きが遅れたり、通勤手当が一部未支給になったり、従業員と組織の間でトラブルが起こった際の対応資料が不足したりという問題につながります。

【例】

  • 「保険証券の写しを確認していなかったことで、任意保険未加入のまま車通勤を許可してしまった」

  • 従業員が突然出社しなくなったんだけど、身元保証人や緊急連絡先が分からない」

  • 「家族の健康保険証が届かないという連絡で初めて被扶養者の存在を知る(家族情報未提出)」

これらの細々とした問題が入社書類の不備によって起こりますので、トラブルに備えて入社書類は必ず入社前にすべて回収することが大切です。

場合によっては「入社書類が揃うまでは入社延期にします」という姿勢も重要です。(ただし、入社日の一方的な変更はリスクがあるため、入職予定者に説明して合意を得るべきです。)

まとめ

入社書類の不備物の回収は早め早めで動きましょう。

提出催促はついつい後回しになってしまいがちです。直接利益を生まない業務であり、緊急度が高くないことも理由のひとつです。

しかし、従業員とのトラブルが発生した際、企業を守る盾になるのが入社書類(誓約書、身元保証書、任意保険証券の写しなど)です。

いざという時のため、入社書類の完備は徹底しましょう。

この記事を書いた人

板谷 隆誠のアバター 板谷 隆誠 代表 社会保険労務士

岡山県倉敷市で『あなうみ社労士事務所』を運営しています。趣味はマラソンです。

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